「はー、毎日毎日暑いわね〜。」
コットの村のメシ屋。決して大きくない村で、中央大陸の都市部などと比べると、
かなり原始的とゆーか、農業的とゆーか、気とワラの家なんかもあったりして、
ひらたく言えば田舎といったところだろう。まぁ、この地方には都市部のほうが
少ないくらいなので珍しくもない、ごくふつーの村である。でもちょっと田舎すぎかな。
んで、そんな村のメシ屋で、フィーナがうちわなんぞであおぎながら、4人は昼ご飯を食べていた。
「だって夏だもん。」
ミリアがすきやきを食べながら言った。
「・・・・・・あんた・・・この暑いのになにすきやき食べてんのよ・・・・・・」
うんざりした目でミリアを見るフィーナ。
「みゅ〜、おいしーよ♪」
―――この小娘もたいしたもんである。湯気がもくもくしているのに、暑いとも言わない。
しかも昼からそんなに食うんじゃねーよ。なんだよすきやきの横のハンバーグは。グラタンは。
ほんと、ミリアを見てると “おまえ人生間違ってるんじゃねーか” と言いたくなってくる。
こんだけ食うのになんでこんなに小さいんだ。あんたは。
「ふぁひふぃふぁふぇふほへ♪」
リースが、ナイアガラの滝のよーに、すぱげてぃをくわえながら言った。
無論、何を言ってるのかわからない。
「何者よ・・・・・・あんた・・・・・・」
フィーナの言葉は他でもない。リースの口から出ているすぱげてぃから連想するものは、
たいていの人はクラゲか火星人という事実にのっとって、定義通り、
彼女の存在形態を知るために使われた人間の本能とも(言いすぎ)言うべきフレーズである。
よーするに今のリース、とことんあやしいといふことでありますです。
「ひほひへふは、ひーはほふ」
「だーかーらぁー、ちゃんと食べてからしゃべれっつーに。」
ちゅるちゅるごっくん。
いっきにめんを飲みこんだ。
「ぷはー、やっぱり夏はめん類がいーですよね♪」
「いや・・・・・・あんた見てると食べたくなくなってきたわ・・・・・・」
ただでさえ、暑くて汗が出るのに、こいつを見てるとよけー汗がでる。
「・・・・・・」
うきゃうきゃな3人と同じテーブルについているものの、ずっと黙っているセレス。
目つきが本気で不機嫌である。
ま、無理もないであろう。記憶がないのにそーそー機嫌がいい人もいるものではない。
それなのにこの3人はやかましくてしょーがない。
(・・・・・・このバカ女3人、全然役にたたねー。ひとりで元に戻る方法探したほーがましだ・・・・・・)
ジト目で3人を見るセレス。
(あーあ、はやくいなくなっちまえ、てめーら・・・・・・)
セレスはぱくっとお子様ランチのチャーハンを食べる。なげやりで。
―――このお子様ランチも子供あつかいされたよーでむかつく要素の一つである。
「あー、暑い暑い。海でも行きたいわねー。」
フィーナがうちわであおぎながら言う。
セレスの顔がぴくぴくひきつっている。
「海っていったらやきそば食べたくなっちゃった♪おばちゃーん、やきそばついか〜♪」
(―――・・・まだ食うか・・・このくそガキ・・・・・・)
セレスの顔がさらにぴくぴくひきつっている。
「じゃぁ、今度、海でも行きませんか? 皆さん♪」
(―――・・・山の次は海か!? 旅行してんじゃねーぞ、わかってんのか、小娘!!)
ついにセレスは立ち上がった。顔に青スジうかべて。
―――今のセレスに近づく者、死あるのみである。
(こいつらと一緒にいたんじゃいつまでたっても元にもどれねーよ・・・・・・このやろー・・・・・・
いつかまいてやるぜ、てめーら・・・・・・)
さすがにこの3人を見てると、絶対役に立ちそーにない。
セレスの気持ちもわかるよ、うん。
「おばちゃーん、かきあげひとつ〜♪」
「私は冷やし中華おねがいしま〜す♪」
「あたし、かきごおり〜宇治れんにゅ〜♪」
―――それに、第一、食費が一人旅の百倍はかかる。1人のほうが絶対楽だ。
セレスはこいつらをまくことにしたのであった。

夜。
ちょっとボロい感じのある宿屋で、1階は昼間食事した食堂になっている。
まぁ、ボロいといっても丈夫そうにできているし、色が木目の色だけなのでそう見えるのかもしんない。
しかし、今問題にすべきはそんなコトではないっ!!
「セレス〜、いっしょにおふろはいろ〜♪」
―――これである。このミリアとかゆーくそガキ、セレスを妙に子供あつかいする。
セレスにとっては5歳といえども、女の子と同じ部屋にいるのはかなり嫌である。
しかも13歳の小娘に子供あつかいされるのはなんか腹立つ。
それなのにそれなのに、さっきから「セレス〜いっしょにハミガキしよ〜♪」だの、
「ねぇねぇ、このふとんふかふか〜♪ セレスもおいでよ〜♪」だの、わけわからんことをぬかす。
んで、きわめつけが「おふろはいろ〜♪」である。
おちょくっとんのかあぁぁっ!!
「あのなぁ、俺はそこまで子供じゃねぇっ!!風呂くらいひとりではいるっ!!」
セレスが青スジ浮かべて怒鳴る。
「みゅ〜、でもおふろ、あぶないよ〜おぼれちゃったらどーするの?」
「風呂でおぼれるかあぁぁっ!!」
セレスの剣幕に、少ししおしおになって反論したミリアだが、ボケた内容のため、
再び怒鳴られた。
―――まぁ、確かに風呂におぼれるような奴なんぞいないわな。(いたとしてもミリアくらい)
「・・・・・・とにかく、俺は女と風呂に入るなんて・・・・・・」
そこまで言ってセレスははっと気がついた。
―――ミリアが半泣きになっている。大きくてくりくりしたライトブルーの瞳から、
今にもほおをつたって流れ落ちてしまいそうなくらいの涙がたまっている。
「だって・・・・・・だって・・・・・・ひっく・・・・・・私・・・・・・セレスが・・・・・・しぐっ・・・・・・」
さすがのセレスも女の子に泣かれては弱い。(まぁ少なくとも今の状態はね。)
「お、おい、泣くなよ。・・・だっだからぁ、俺は男だからぁ、女湯には入れないんだってばぁ・・・・・・」
「へ? そーなの?」
ミリアはきょとんっと泣きやんだ。
・・・・・・こいつは・・・「へ? そーなの?」ぢゃねーだろーが!!
「だっ、だから1人で行くの心細かったら隣の部屋の2人と行きゃあいいだろ。」
ミリアは、その言葉に笑顔になった。
「うん♪ そーする♪」
―――セレスは、目の下にタテ線なんぞを入れながら、ほっと一息。
それにしてもくるくる表情が変わる奴である。
「じゃあ私、リースとフィーナとおふろにはいってくるね♪
・・・・・・えっと、いい子にしててね、セレス♪」
ぱたん。
ミリアは部屋から出ていった。
「ふぅ・・・・・・」
ひとりになった時に、考えつくのが例の作戦である。
例の作戦とはすなわち、あの食費百倍の3人 (通称) をまくことである。
「・・・・・・うーん・・・・・・どうすれば逃げられるか・・・・・・」
セレスはふと考えこんだ。
(―――まてよ・・・・・・今、奴ら風呂にはいってるだろーから今逃げりゃあいいじゃねーか。
そもそも計画たてなくても食費百倍の3人 (通称) がいないときに逃げりゃあよかったんじゃ・・・・・・)
うん。確かにそうだよ、セレス君。悲しいことに。
「けっ! あんな奴らさっさとまいてやるぜ!!」

―――かくして、セレスは宿を脱走し、夜の道へととびだしたのであった。
ミリアの気持ちも知らないで。

 

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