もう誰も信じないと決めた。 なんで人間って裏切るんだろう。 信じてたのに。 暗殺者の集団なんて冷酷なものなのかもしれない。 でも、私の仲間は違うと思ってた。 だけど。 任務中に負傷したら見捨てられるんだ。 当時、私は十一歳だった。 傷を負って仲間に捨てられた私は捕らえられた。 散々殴られてつらかったけど、なんとか脱出した。 当然仲間のもとに帰る気なんてなかった。 そのときからだ。 私が人を信じなくなったのは。 私が丁寧語を話すようになったのは。 誰に対してもやさしく振舞うようにした。 でも信頼はしない。 そうすればもう裏切られることはない。 絶望することもない。 だって、初めから信頼しないのだから。 そんな生き方をして四年。 十五歳の冬。 初めてエリィに出会った。 「メリィさーんっ!」 無意味なほど元気なミナの言葉がお風呂場に響く。 今日は温泉のあるホテルに泊まっている。 もちろん、今夜決行の作戦の一貫である。 でなければこんな昼間っから風呂には入らない。 「あなた声大きすぎですよ」 まったーりと湯船につかっているメリィは、そのためかいつもよりおだやかな口調だった。 「えへへっ」 さすがに自分でも声が大きかったと思ったのか、ミナは照れ笑いを浮かべる。 「で、何ですか?」 ミナがすぐ隣に来て、にこっと笑う。 「メリィさんとエリィさんて、とっても仲良しですよね」 「は!?」 明らかに動揺してしまった。 「別に……」 「え?あれ?照れてるんですか?」 「……沈みなさい」 メリィはミナの頭をひっつかんで湯船に沈めた。 やがて、勢いよく顔を出すミナ。 「げほっ、げほっ……メリィさん〜」 ミナは、あやうく死にそうだったという顔をしていた。 「仲良しだとか……そんな言葉は……」 エリィは親友だ。 あのとき。あの冬。 やっとできたただ一人の親友。 「……そんな言葉は……照れます」 ミナはくすっと笑う。 笑うな。 「何ていうか、その、メリィさんにも人間らしいところが……がぼっ」 再び、ミナは湯の中に沈んだ。 「エリィ、お風呂いただいてきましたよ」 「うん。さっぱりした?」 メリィはすでにいつものローブ姿である。 現時刻、午後二時。 午後五時三十分には作戦が開始されるのだ。 「はい。エリィも入ってきたらどうですか?」 「あはは、昼間からお風呂なんて入らないよー」 「……何ですか?」 メリィのロングダガーがぴたりとエリィの首につきつけられる。 「ご、ごめん。うそです」 ちなみに作戦とは、リミリフルト家のマジックアイテム奪取作戦のことだ。 ここで作戦内容を簡単に説明しよう。 段階一:メリィとミナが屋敷に入る。ミナが迷子になったのをメリィが家に送り届けたという設定。この際、何が何でもメリィは家に招いてもらう。 段階二:エリィが、レプティナが用意した逮捕状を持って屋敷に侵入。抵抗に合うことが予想されるので、ひと暴れ。 段階三:エリィが暴れてる間にメリィ達が目的のマジックアイテムを奪う。 段階四:あとは警察にまかせる。 まあ、きわめて大ざっぱに言えばそんな感じだ。 「エリィさん、一人で大丈夫なんですか?屋敷には警護用のファイターもたくさんいますし、いくらエリィさんでも大勢を相手にするのは苦しいのでは?」 ミナが心配そうに言う。その口調からは彼女にとってエリィが大切な人であることが感じられる。 「うーん、大丈夫だよ。わたしは、弱くはないから」 エリィは笑顔でミナに言う。 これはハッタリなどではない。 本当にその実力があるのだ。メリィは知っている。 「それより私は逮捕状を用意できるほうが驚きですが」 レプティナがなぜ 逮捕状を発行する権限を持っているのかさっぱりわからない。 まあ、レプティナにしてみれば自分達に教える必要もないだろうが。 「確かに、わかんないよね。レプティナってすごい」 エリィは苦笑を浮かべていた。 |
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